上側は南壁に画かれているもの、下側が北壁に画かれているもので、色の黒い僧はインドの僧、白いのは中国僧であろう。数十人の僧たちが、それぞれに二人ずつ組手となって拳法演練に励んでいる。どの僧も真剣で、しかも楽しげで、不思議な雰囲気を漂わせている。 この壁画こそ、私たちの修行する少林寺拳法の原点なのである。ここにあるものは、争いを求め、敵を倒すために血走ったりはしていない。互いに楽しみながら技をかけあい、相手の上達を求め合う姿は、まさに「行。そのものに他ならない。目己の確立を求めて身心をきび鍛えながら、同時に相手のしあわせを願う「目他共楽」の実践像なのである。 達磨の伝えた、禅門の行としての拳はこうなければならぬはずと、開祖宗道巨師家の脳裡に深く刻まれたこの確信が、敗戦直後の日本で青少年育成の道に足を踏み出されるに当って鮮やかに甦ったのである。 日本に生まれた少林寺拳法は、まぎれもなく仏伝正統の行法を復元再興したものであることを、そして、いまは中国でもほとんど失われた拳技の原形が、この絵を通して少林寺拳法の技法の中に脈々と生き続けていることを、この壁画は私たちに語りかけてくれる。 |